父親を亡くした息子の遺品整理

葬儀社からの紹介で遺品整理を依頼されることもあるのですが、担当したその部屋は死後1ヵ月経っており、五階建ての三階にある部屋の天井には鉄パイプがむき出しにされているのが印象的で、各部屋の玄関前にぶら下がっている蛍光灯がわびしさを感じさせます。

その部屋に住んでいた主は、75歳の一人で暮らしている老人でした。

40代の依頼者となる息子と葬儀社の人と玄関前で待ち合わせをしたのですが、その時点ですでに異臭が漂っている状態でして、足元にはウジ虫が湧いているのが目にとまりました。

さすがの私も、とんでもない状態になっているのではないかと頭をよぎり、恐る恐る扉を開くと、案の定でしたが、足の踏み場がない状態で、息子さんも必死でしたが、完全に青ざめている状態で、人が出入りすることは出来ないと言っても過言ではありません。

ここで遺品整理の専門家が尻込みしていては話になりませんし、自分自身に活を入れて、ウジ虫が少ない床を見つけて先へ進みました。

2DKの間取りで、奥の和室に布団が敷いてあるのが現場となり、その蒲団には人間型のように色が変色しており、勇気を振り絞り布団をめくると、無数のウジ虫の塊が布団の中で蠢いているのを発見しました。

死臭に気付かない

ここまで来たら、後には引けませんので、殺虫剤を手にして手当たり次第にウジ虫の駆除を始め、20分ほどで全ての部屋に殺虫剤を振り撒き、部屋の外に退却すると息子さんの姿が無く、外で待機しているのだと思って1階まで下りてみたのですが、息子さんの姿が見つからずにいたら、4階から私を呼ぶ声が聞こえて息子さんが降りてきたのですが、どうやら、3階が故人の部屋で4階に息子さんが住んでいて、一時的に自分の部屋に戻っていたようです。

しかし、実の父親が1つ下の階で亡くなっていて1ヵ月も気づかないものかと、申し訳ないのですが、近くに住んでいて死臭に気付かなかったのか尋ねてみたら、夜勤が多く会う機会がなかったと私に謝ってきました。

もう少しこまめに部屋をのぞいてあげれば良かったのにと思いました。

翌日には一連の作業を終え、集金のために4階にある息子さんの自宅にお邪魔すると、自分も引越しをして心機一転したいとのことでした。

私としても仕事が増えるのは嬉しいことなので、見積もりを取るために部屋に上がると、親子そろって部屋が汚いのかと驚きましたね。

奥さんと離婚してから子供と一緒に暮らしており、部屋も掃除が行き届いていないというよりは、ごみ屋敷に近い状態だったので、部屋の中が生ごみの匂いで充満しており、きっとそのせいで父親の臭いにも気付くことができなかったのだと思いました。